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『里山ビジネス』
長野の里山に開いたワイナリー経営を紹介、自然調和型・持続型ビジネスの本質を説く

 著者は、最近『田舎暮らしができる人 できない人』を上梓した長野在住の文筆家・画家。フランスへの留学経験を持ち、その関連のエッセイ等も執筆。農園主にしてワイナリー・オーナーである。

 この本は、全5章立てで、第1章は「素人商売事始め」と題したワイナリー起業のエッセイ。人気もまばらな田舎で、初期設備投資の大きいワイナリーを開業し、採算性を向上させるためのさまざまな取り組みを試みていく話題。第2章は「ワイナリーを起業する」として、ワイナリー経営を主にビジネスとしての視点に立って紹介する。ここまでは、具象的・即物的な内容だ。

 第3章「里山のビジネスモデル」は、里山ビジネスの真髄を述べた章と言えよう。その場の風景やその場での農作業などの生業や生活の営み、その場でしか手に入らないものなど、そこに行かないと見ること、得ることができないオリジナリティあふれるものをふんだんに採り入れ、それを遠方から来る客に提供することの価値と効果を説いている。つまり、その「場」から切り離せないもの、切り離したら価値が消滅するものこそが里山ビジネスの何よりの商材と言えそうだ。

 また、第4章は「拡大しないで持続する」として、里山ビジネスの要諦そのものズバリをタイトルとし、古今東西、あるいは著者自らの実体験に基づく、自然と共にある暮らしから会得したことのエッセンスを紹介する。 第5章は「グローバル化は怖くない」として、グローバル化を地域社会・地域経済を破壊する脅威として対置する見方を取らず、むしろ地球全体や国家全体の大きな潮流を著者はまず受け容れている。しかし、それからは超越したスタンスに立ち、自らの暮らしの場、仕事の場にしっかりと足腰を据えていくことの必要を説く。

 さらに、この章では、著者の提示するふたつの労働観、すなわち同じ仕事に就いても事業家を目指すか、職人の道を探求するかという点、換言すれば「拡大」を指向するのか、「持続」を指向するのかという点が鮮やかに浮かび上がっているのが興味深い。要するに、里山ビジネスとは、自ら選びとった場での、その人間が目指す生き方そのもの通ずるということが伝わってくる本である。

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『図解 山を育てる道づくり』
低コストで耐久性のある「四万十式作業道」づくりのノウハウと他地域での実践を紹介

 この本は、高知県四万十町の監修者が確立した日本の気候や山林の条件に合致した「四万十式」の作業道づくりを、イラストレーター・ライターの著者が一書にまとめたものである。

 「四万十式作業道」の“売り”は低コストと高耐久性、および環境調和型である点だが、それを実現しているのが、“半切”、“半盛”、“残土なし”の道づくりである。切土によって剥がされた表土を盛土する路肩に交互に重ねて転圧し、さらに支障木の根株も根の山側と谷側を反転させて路肩の土留に活用する。この表土と根株の活用が施工後の崩れやすい路肩の緑化を短期間で実現することにつながっており、丈夫な道づくりの重要なポイントとなっている。

 このほか、豪雨時の流水谷沢水対策、路肩補強のために必要最小限に使用する丸太アンカー工法、ルート選定の実務、必要な道具・機械・人員とその細かな作業法の解説、費用と手続きなどを、豊富なイラストや写真を効果的に活用し、わかりやすい文で紹介している。また、この方法を日本の各地で実践した事例も6例ほど紹介されている。

 林業のためだけではなしに、山林を生活の場にしている人、しようとしている人が低コストで環境調和型の土地造成をするのにも応用の利く施工方法だと思う。自分で挑戦しても、何となくできるような気がしてくるほどに細かい点まで解説の行き届いた良書である。

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『写真図解 作業道づくり』
低コストの作業道づくりのノウハウを余すところなく紹介

 この本は、近畿地方の林業実践者の共著による作業道づくりのノウハウを写真・図と解説文で詳細に解説したものである。林産品の採算性が大きく後退する中で、如何に低コストで安全かつ耐久性のある林道をつくるかということに林業の将来性が掛かっているという、日本の林業の現在と将来を見据えた作業道づくりの解説本であることが本書の特徴だ。

 林業全体に対する明確なビジョンに裏付けられた内容で、それが単なる矮小な作業道づくりのノウハウ本ではない奥深さを醸し出している。かといって、その一方でいたずらに“うんちく”を垂れる訳ではなく、その説くところは、平易かつ明快であり、評者のような非林業関係者でもかなりしっかりと理解できる内容となっている。

 この本の説く作業道づくりが目指す具体的な目的も明確で、林内で調達できるものを最大限に活用し、2トントラックで容易に集材できる高密度な路網づくりをバックホーによって造成するという点にある。これが長年の経験に裏付けられた実践的技法であることがポイントで、成功体験はもちろん失敗の事例も踏まえているだけに読む者を納得させずにはおかない内容となっている。

 林業関係者、林業に興味のある人のみならず、広い森林を入手して、そこに自らの手でライフステージを築き上げたいと考える人にも、大いに参考になるであろう本であると言えよう。特に、計画・施工ともに安全性・耐久性を確保するために踏まえなくてはならない“禁じ手”が参考になると思う。太古から営まれてきた“道づくり”の基本までもが透けて見えてくる内容の良書である。

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『森林からのニッポン再生』
人工林・山村のいまと、戦前の山林と林業経営のあり方から将来の方向性を提示

 森林を中心に据えた山村の再生の道を探った森林ジャーナリストによる本。全体を通じて「人工林」の歴史的変遷とその役割や価値、戦後の燃料革命以前や戦後復興で木材需要が高まった以前の「人工林」を中心とした林業経営のあり方を参考に、これからの山村での生活や林業経営のあり方などの手がかりを示す。

 この本のキーワードとなる「人工林」を捉える視点は、戦後の高度成長に伴う拡大造林期や、その後の放置林・荒廃林が増加した時期の林業のあり方をはじめ、農業、生活への利用のあり方も含めた、現代人の持つ森林へのイメージ、すなわちこれまでの「常識」が、直近の実態とはそぐわなくなって来ていることを多々指摘している。

 外材の輸入事情も直近では随分と変化してきているようであるし、外材にコスト的に圧倒されて市場競争力が弱いということは常識化しているが、それに加えて国産材は、川下への供給体制が納期・数量・規格・乾燥など量・質ともに低レベルにあるという大きな問題点も指摘している。

 戦後の拡大造林期に全国各地に植林された針葉樹が、いま主伐期を迎えているということを、最近耳にすることが多くなったが、戦後復興から高度経済成長期の需要増による高値の取引の再来を望んでも仕方ないだろう。その時は、売手ペースで生木だろうが、規格が不均一だろうがバンバン売れたのだろう。そのような「山師」的な経営感覚で林業を見たら、先行きに展望が開けないのは当然だろう。

 著者による、森林が供給する資源を現在の需要に照らして多角的に製品化していく必要があるとの指摘は有用に思えた。燃料革命で薪炭材の需要が激減したのと同様に、ブラスチックなどの石油化学製品の普及で、様々な林産品の需要も激減したが、昔は主伐で得られた木材を売らなくても様々な林産品で収入が上がったという。これからの林業を持続していく道があるとしたら、山林から得られる原材料をもとに多角化や差別化を推進していくことだということになるだろうか。

 思うに、木を収穫する林業とは別に、森林の「場」そのものの有用性に着目した体験型のサービスを提供していく道も模索されるべきだろう。そのようなことを考えていく上でも、また一般的な教養として一昔前の「常識」ではない林業・森林のいまを知る上で、好適な1冊だと思う。

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『農!黄金のスモールビジネス』
農業経営にオリジナリティあふれるビジネスモデルを提示

 著者は、通信機メーカーの研究開発12年、半導体メーカーの営業12年を経て、外資系企業の営業統轄本部長を経て「脱サラ」。宮崎県で新規就農してぶどう園を中心とする専業農家になった人物である。本書は、『農で起業する!』の続編にあたり、自らの営農実践をもとに労働時間の管理や価格設定、顧客管理などの「スギヤマ式農業経営」の発想と具体的方法を紹介している。JAなどを利用した(JAに利用された?)農業経営とのコントラストが非常に鮮明で、その戦略・戦術の説明も明快であり、就農希望の有無を問わず、興味深く一気に読み進められる本である。

 ただし、それだけに、新規就農を目指す人がこれを読んだだけでその気になったら「危ない」本であると思う。うたい文句の「週休4日、時給3000円」であるが、誰もがこれを真に受けてはなるまい。これは著者の「サラリーマン時代は、左手にコンピューター、右手に経営書を常に携えた経験」と、就農後の弛まざる研究・実践の試行錯誤の賜物なのであって、農園のブドウが高付加価値商品なのではなく、農園のオーナーが高付加価値の研究開発・経営手腕の持ち主であるが故のことだと思う。単純な農作業の時給が3000円ならば別であるが、これだけのスキルを身につけた人の時給が3000円というのは、全く驚くに値しない。

 それはともかく、オリジナリティあふれる楽しい内容の本であり、一読を勧めたい。

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『農のあるまちでスローライフ!第2集』
自治体や農業関係団体などに向けて都市農業の可能性を提示

 この本はA4サイズだが、50頁弱の薄い冊子で一気に読める。都市住民と共生してまちづくりの一翼を担っている都市農業の従事者やその協力団体などの取り組みが紹介されている。

 都市部の土地を農地にしておいてよいのかという声や重い相続税を心配しながらも、農家として都市農業を堅持し、市民や消費者のニーズにも応えていくという、都市農業の可能性・方向性が示されている。具体的には、農業を市民の生きがいや市民生活の充実に役立てていこうとする市民農業講座・農業体験農園・農産物直売所・荒廃農地を復元する市民ボランティアの活動や京野菜などの郷土料理の食材を守る取り組みなどの実践例がその内容である。

 その所在地である都市やその近辺に住まいする「農」と関わりを持ちたい人などへのガイドブックとしては有用であろうが、どちらかといえば地方自治体などの行政機関や農業関係機関・団体へのまちづくりや農地活用の参考に供することに主眼がおかれた本と言えるだろう。都市農業の現状の一端をうかがい知ることのできる一冊である。

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『生きている日本のスローフード 宮崎県椎葉村、究極の郷土食』
日本の基層文化にまでさかのぼる郷土食の奥深さを実感

 この本は、『田舎暮らしの本』(宝島社、2003年8月〜05年2月)に連載した記事をまとめたものである。全293頁のハードカバーできれいなカラー写真がふんだんに盛り込まれていてボリュームたっぷりに仕上がっている。

 熊本との県境にある宮崎県椎葉村という山村に今でも伝わる農耕・狩猟・漁撈の数々やその収穫物を用いた加工食品や料理が紹介されている。豆腐の中に刻んで茹でた山菜・野菜を入れた菜豆腐、蒸し茶ではなく大釜で炒ってつくる釜炒り茶、石灰岩層を通った谷川でとれるノリ、干タケノコなどが入った煮しめ、カシの実コンニャク、ヤマユリ(ウバユリ)でつくるデンプン粉、ヒガンバナの近種で有毒のオオシ(キツネノカミソリ)からつくるデンプン粉、ヤマノイモ科に属するヒメ(カシュウイモ)・高い山の絶壁に群生する地衣類のイワタケ、そば粉を用いた具を入れるダゴ汁、麦・小豆・米を竹皮に包んで煮込む麦包み、ヒエ・アワ・トウキビ・小豆などを加えて蒸したウムシ飯など、珍しい食材や加工法を用いた料理が次々に出てくる。

 また、雑穀をはじめとする農作物をもたらす焼畑農耕、アク抜きの技法、エノハ(ヤマメ)・ウナギなどの釣り、シシの狩猟法なども詳しく紹介されている。

 日本列島に稲作農耕が伝来する以前にさかのぼるとされている山村の食文化の営みが未だに継承されていることには驚きを禁じ得ない。このような奥深い食文化は、21世紀にも継承されていって欲しいと願わずにはいられない。


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『山で働く人の本 見る・読む林業の仕事』
林業のしくみと仕事、山村での暮らしなどをIターン経験者の実体験を通して紹介

 この本は、社団法人)日本林業改良普及協会が編集した本で、林業の現場の森林組合や林業会社やそこに就労した人に幅広く取材した本で、一般には馴染みの薄い林業で働くということ、山村に暮らすということの実際がどういうものなのかを、さまざまな立場にある人20人あまりの実例を通じて紹介するかたちでまとめた分かりやすい本である。カラーページも豊富でイメージがつかみやすいのが特徴になっている。

 内容の全体構成は、「1.ルポ『林業最前線』」で林業への新規就労者やその仕事の紹介。「2.林業ってなんだ?」では、林業の意義や産業としての役割、作業の安全性と危険性などを解説する。また、「3.職場のしくみ」では、一般には馴染みの乏しい森林組合と林業会社の組織や就労条件などを説明している。さらに、「4.山村での暮らし」では、生活の心構えや近所づきあい、地域社会の組織、交通・不動産事情、・子どもの教育から選挙まで、体験談的に紹介している。

 最後に「5.私たちのIターン林業」では、Iターンで林業に新規就労した後、NPO法人や林業会社を設立して独立した人の事例が紹介されている。巻末には、森林・林業とその就労のための情報源が若干紹介されている。

 本当に読みやすく、具体的なイメージが湧く内容になっていて、全133頁なので3時間ほどで一気に読むことができた。難をひとつ言えば、一般の出版社の同程度の本に比べて価格が高い。

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『農で起業する!』
「農」にメーカーの企業経営手法を導入して脱サラ新規就農

 著者は、外資系の半導体メーカーに勤めていた技術畑出身の営業マンで、脱サラして専業農家に転じた。この著者の新規就農は、サラリーマン時代の仕事をすべて投げ捨ててというのではなく、企業経営のノウハウとコンピュータを活用したデータ管理などを農業に転用し、経営の最適化を追求している点が特徴である。危機管理、労働生産性の向上や経費節減による収益性の向上のための具体的な実践内容や自己研修重視の姿勢などは、十分に参考となろう。

 また、農政・農協の営農指導と一線を画し、独立独歩の経営姿勢をとる専業農家の立場から、過剰な施肥や無駄な資材の投入、補助金漬け、勘に依存した曖昧な計測、味を無視した外観の美しさの追求、有機農業・無農薬農業をめぐる誤解や問題点などを指摘し、生産者の視点で説明を加えている。

 また、宮崎県で新規就農した著者の仕事や生活、地域の人々との交流など、著者のライフスタイルも綴られていて興味深い。

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『サラリーマン、やめました−脱サラ戦士たちの「それから」』
サラリーマンという生き方を相対化し、起業に必要なメンタリティを教えてくれる本

 この本は、2003年11月から半年間にわたる『週刊ポスト』の連載記事を単行本にしたもので、25例の「脱サラ」が紹介されている。「脱サラ」に至る契機や決断、その後の生業の状況や周囲の環境の変化などが、1例ずつとりあげられている。「脱サラ」後のライフ・ステージは、田舎あり、都会ありとさまざまだが、やはり「脱サラ」する人は「戦士」であり、「戦士」たらねばならないという感想を持った。「脱サラ」志願の人には何かと参考になるであろうし、また「サラリーマン」には自分の職業・生き方を相対化してみるきっかけを与えてくれそうな本である。

 なお、本書が紹介している「脱サラ」後の生業を、以下に列挙しておきたい。

 … 防カビ施工・百名山早歩き(大型トラックの運転手)・農業と探偵・ソフトウェア開発のベンチャー企業・安売りめがねチェーン・花卉栽培・トレーラーコテージ・不登校などのカウンセラー・鍼灸治療院・僧侶・僧侶とペット霊園など・食事処と農業・墓石の訪問販売・製茶店・蕎麦屋・多国籍料理店・焼酎専門バー・野球用品専門のスポーツ店・アジア雑貨屋・ラーメン店・自家製ハムソーセージの店・山小屋で画家・和竿師・ジャズ専門のバー・ミステリーやSF中心の古書店・津軽三味線演奏家・竹とんぼキット販売と経営コンサルタント・ルアー専門の釣具店・家具工房・古書店案内サイト経営・地域生活支援のNPO設立・保育園と知的障害者の作業所・ぶどう農園・光学系玩具の開発・ステンドグラス工房・石窯焼きのパン屋・自家焙煎のコーヒー豆店・勤務や開業をしないフリーの医師・陶芸家・漁師・難聴者字幕ライターとシンガーソングライター・古代米の農園・キャラクター玩具店・酪農・海ブドウの養殖

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『食べていくための自由業・自営業ガイド』
独立して食べていくには、まさに十人十色の方法があることに気付かされる本

 自己の成功体験をベースにした起業のすすめや起業マニュアル、資格取得ガイドの類は珍しくないが、この本はそれらとはいささか趣を異にする。

 この本の著者は、<この言葉(=職業?)自体が強いインパクトを持つが>「無料職業相談所」なるものを30年以上も主宰しているというユニークな経歴の持ち主である。

 本書からは、自己の職業人としての経験と、多くの成功や失敗の実例を間近で見てきた経験とが融合した、職業というものに対する見識の奥行きと拡がりが感じられた。

 随所に「なるほど」と思わせる記述があるが、ポイントは、「何をやるか」決めたら、それを「どうやるか」突き詰めることにあるように思われた。

 この本では、各章ごとに10種ずつ40種の職業が紹介されている。農業、環境保護、地方での大都市圏のアパート斡旋業なども取り上げられており、起業を考える上で、大いに参考となるだろう。 

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『日本の農業を考える』
日本農業の背景と現状、その方向性を平易に説いた書

 日本の農業をとりまく現状を捉え、国内レベルでも、地球レベルでも、地域に応じた多様性ある、そして風土と共生できる循環型の農業を模索していく方向性が提示されている。

 また、日本農業の現状が敗戦後からはじまる「現代農業史」の視点で解説されており、占領下も、独立回復後の日米安保体制下でも、アメリカの軍事・食料戦略の枠組の中で、国や農民の農業政策・農業経営が自己決定権を喪失していった過程がよくわかる内容となっている。

 また、プラザ合意やウルグアイ・ラウンド以降、グローバリゼーションの流れの中で市場万能主義が台頭した。その結果、食品企業の海外移転が進み、生産する側の中国や発展途上国の農民も、消費する側の先進国の農民も、どちらもますます苦しい状況に立たされているという。日本の農業の現状と、その歴史的・国際的背景を知る上で、とても有益な一冊である。


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『農家のマーケティング入門』
農家のマーケティングを豊富な実例で解説

 マーケティングとは需要を新たに喚起し開発することではなく、今現在の需要を見出し、それに自分の商品を近づけ、その結果を消費者に伝えていくことであるという理解を、農業でも実践する必要を説く。

 特に「食」への信頼が揺らいでいる現在は、商品だけでなく、自分や自分の商品に関する情報を積極的に提供することが重要であるとする。

 このほか、消費者の構造とターゲットの明確化、生活と生産を維持する適正な販売価格の設定などの必要性、直売の方法などが解説されている。

 この本は、過剰な設備投資のせいで10年返済の負債3000万円を背負ったなどの自らのさまざまな失敗例や、自ら設立したNPO法人の会員の事例を紹介するなど、ケーススタディが豊富なのが特徴である。
 それにしても、「失敗」による負債返済のために、「失敗」そのものを本として商品化するビジネス・マインドには、脱帽である。

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『地方移転でリッチになろう!』
田舎は儲からないという固定観念の転換でビジネスチャンスをつかむことを説く

 この本のメッセージは、「都会=高所得」・「田舎=低所得」、したがって「地方移転=所得減」という固定観念を克服し、田舎で積極的にビジネスを展開し、都会のときよりも高所得を実現していこうというものである。

 内容は、著者自身の地方移転のいきさつに始まって、輸入品の卸売、ネット販売、ふるさと小包、蕎麦屋など、失敗体験も含めた自ら手掛けた様々なビジネスの紹介である。また、競売・薪ストーブ活用などの経費節減法の実践、住居・ペット・近所づきあい、家庭菜園など田舎での暮らしの様子も紹介されている。随所にジョークを交えながら小気味よく話が展開し、読みやすい本となっている。ただし、端々に少々下ネタ系のジョーク・小話も織り込まれており、その類の話題に強い嫌悪感を覚える方には、あまりお薦めできない。

 全体を通じては、プラスのビジネス条件に着目して、発想を豊かし、果敢に物事に取り組む著者の姿勢が、田舎でのビジネスを成功に導いているという印象を強く抱いた。田舎で起業する場合、まずはこのマインドを見習うべきであろう。


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『田舎で起業!』
田舎起業にはマーケティングに一工夫加えることの重要性を説く

 
村おこし事業や田舎での起業に取り組むときには、農林業や田舎社会、起業そのものを勘違いし、障壁にぶつかって撤退することが少なくないという。

 新規就農の農地取得、有機・無農薬栽培のための高度な栽培技術、産直に取り組む「宅配奴隷」、直販所でのダンピング合戦、炭焼きの原木調達など、様々な落とし穴が待ち受けているようだ。

 しかし、一方で、成功している事業の大半は、既成の技術や商品であっても、加工の仕方、マーケティング、品質管理、魅力的な宣伝、新たな顧客への営業など、わずかな工夫で大きな効果をあげているという。

 その発想の源は、田舎で起業する以前の経験に根ざしていることが多いということだ。

 脱サラ・起業を考える前に、その前段階の仕事でどれだけの経験を積み、どれだけ感度のよいアンテナで物事を捉え、考えてきたかが問われるようだ。脱サラにせよ、田舎暮らしにせよ、今の仕事を中途半端にしていたのでは、成功はおぼつかないようである。


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『脱サラ帰農者たち わが田園オデッセイ』
訪問取材で捉えた脱サラ帰農者たちの実態をルポルタージュ

 ノンフィクション作家が団塊の世代を中心に29人の脱サラ新規就農者を訪ねて取材したルポルタージュである。2001年出版の単行本が、2004年に文庫化されたものである。本の中では、取材で対面したときの印象や状況、脱サラまでの経歴、脱サラ就農の動機、経営状況と暮らし向きなどを克明に伝え、「今」の思いや考えなどを紹介している。

 当然のことであるが、脱サラ就農とはサラリーマンを脱して経営者になることであり、年金+αでよいならばともかく、多額の借入れをし、生活費や子どもの教育費までを稼ぎ出そうとするならば、本当に過酷な現実に直面する場合があることがわかる。

 就農10年後農業収入は横ばい、脱サラ就農しながら生活費を夜勤のアルバイトなどで工面している例も紹介されている。また、出稼ぎまでしても十分な所得が得られず、離農しようにも多額の借入れで購入した農地に買い手がつかず、妻子が家を出て離婚、最終的には本人自ら悲劇的な人生の幕引きをするといった事例も紹介されている。

 栽培技術力、資金繰り、体力と健康、家族の協力など、新規就農に求められるさまざま要件が、読んでいて自ずと浮かび上がってくる一冊である。

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『新・自然の仕事がわかる本』
自然と関わる仕事の総合案内窓口

 旧版に30種以上を増補し、「自然のしごと」全94種を、「森と山」・「海」・「大地」・「空」・「動物」・「環境」・「食べ物」の7項目に分類して紹介する。単体では生業になりにくい「しごと」も含まれ、また聞き慣れない「しごと」も多かった。また、本のサイズが大きくて扱いにくいと思ったが、各「しごと」の基本情報が視覚的に把握しやすいレイアウトで、用語の注釈欄も設けられているなど、大きさがきちんと活かされている。また、各「しごと」の相談先や情報を持つ組織などが明示されている点がよい。

 なお、言うまでもないが、本書は8頁の「本書の使い方」を熟読してから内容を読み進めたい。本書は、「仕事データ」として、「収入・注目度・安定性・ニーズ・体力・知識」などの項目をレーダーチャートを用い、5段階で示している。しかし、説明にもある通り、これらは一定条件下での判断・評価であり、一応の目安である。「評価・判断」と言うならば、それはむしろ読者に下されるのかもしれない。本書のデータをどう読み、加工し、活用するかが問われるだろう。「自然のしごと」に関心を抱く人のための「総合受付」の役割は、十分に果たせていると思う。

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『農業に転職する』
Uターン就農した元経営コンサルタントによるおすすめ就農マニュアル

 農家に生まれた著者が、経営コンサルタントから、実家に戻って農業に転職した経験を踏まえて書いた就農マニュアルである。

 表紙にある「失敗しない体験的『実践マニュアル』」のコピーに違わぬ内容で、就農前はもちろん就農後についてもフォローされている。

 内容を一読すれば即座に合点がいくものの、読まなければなかなか想いが至らないような指摘が多々あった。例えば、陸運が全盛のこの時代に、大都市圏近郊で幹線道路などに面した交通の便がよい農地を取得することは、出荷に非常に有利と思ったが、泥棒による被害が深刻だという。

 経営コンサルタントの視点とあわせ、代々の農家の生まれならではの視点にたった就農必読マニュアルであると思う。巻末付録の「読んでおきたい農業本」も役立つだろう。


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『農業という仕事』
広い視野に立った新規就農のためのガイドブック

 農業という職業の解説書というよりも、新規就農ガイドブックともいうべき内容で、就農までの経緯と営農の取り組み、それを支援する行政などのさまざまな活動が紹介されている。

 新規就農には十分な運転資金や当面の生活資金が必要といわれるが、実例を見てみると「言うは易く、行なうは難し」のようである。近年、新規就農者が増加傾向にあるとはいうものの、実状は資金・農地確保・農業技術などの面で、さまざまな困難があるようだ。

 また、新規就農者には、仕事としての農業だけではなく、国際経済の中の日本農業をみつめる眼が求められていることを強く感じた。

 超大国やその穀物メジャーの世界戦略、また国内の輸出産業などとの兼ね合いなどを考えたとき、はたして日本の農政が農業従事者の増加や食料自給率の向上にどの程度まで本気で取り組もうとしているのか疑問を抱いた。


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『電脳田舎暮らしのススメ』
田舎でSOHOというライフスタイルの現実が伝わってくる本

 
タイトルを一見すると、How to 本やガイドブックのようであるが、内容は天草に暮らす著者のヨットと実務翻訳のエッセイと言ってよいと思う。

 各章が実務翻訳(電脳・仕事)と日記スタイルをとるヨット(趣味・生活)の話題の2節立てとなっている。後ろの節はヨットに興味のある方には楽しく読めるかもしれない。
 個人の実務翻訳業については、全くイメージがなかったので勉強になった。
 受注も納入も、「田舎暮らし」ののどかなイメージとは全く似つかないようだ。
 また、「田舎暮らし」に「SOHO」と聞くと、マイペースで仕事をすることに漠然とあこがれている人には、たまらなく素敵な世界のように思えるかもしれない。

 しかし、仕事以前に、ツールであるコンピュータや通信機器、関連消耗品の設定やメンテナンス、トラブルの予防と処置などを、納期に追われながら自分で全部するのは、身近に助けを求められる会社勤めにはない厳しい側面だと思う。

 仕事の他に、ツールに対する広く深い知識や技能も、田舎でSOHOする場合には必須であると言えよう。

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『ペンション経営入門』
ペンション経営の要諦をわかりやすく解説

 この本は、日本ペンション連盟の専務理事等をつとめる著者による経営入門書である。定番通り「ペンションとは」から始まり、軒数や利用者数、売上額などの市場規模の変遷、日本型ペンションの特徴、ペンション事業の収益構造の特徴などが解説されている。

 新たな傾向としては、人件費の上昇や創業オーナーの加齢で、室数に見合った労働力確保が難しくなり、オーバーワークによって廃業に追い込まれる例もあるという。今やペンション経営は、労働量の管理が最重要項目のようだ。

 また、この本は、通り一遍の解説に終始することなく、ペンション業界とペンションのコンセプトや経営形態の将来像について、かなりの紙数を費やしている。これらの積み上げの上に、はじめて経営成功の秘訣、開業手順や資金繰りなど、タイトルとなっている「経営入門」の本題の内容が展開されている。全体的に簡潔明快で理解しやすく、まさにペンションを知り尽くした著者の書といえる。昨今、類書の出版が見あたらない中、最良の入門書であると思う。

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『ペンションおもしろ実践学』
ペンション経営における人的資質の重要性を説く

 この本は、ペンション視察のためのヨーロッパ旅行記(第1章)と、著者がコンサルティングを手掛けた様々な立地・設備などの特徴を持つ8軒のペンションの新規開業の実録(第2章)、用地選びなどに始まるペンション開業のためのさまざまなノウハウの解説(第3章)で構成されている。そのうち、第2章の実践例の紹介が半分以上のボリュームを占めている。

 用地の条件から周辺環境、オーナーの意向などをしっかり吟味して、適役の支配人夫婦を選定・育成するなど、フランチャイズ・ビジネスとしてペンション経営を行っている著者ならではの「おもしろ実践」が紹介されている。コンサルティング業務を営業内容としているので、やや隔靴掻痒の感もあるが、第2章の個別事例とあわせて、第3章の基本的な開業ノウハウも参考になると思う。

 また、百戦錬磨のコンサルタントとして、支配人候補となる夫妻の意欲・姿勢を、経営成功の鍵として重視している点が印象的であった。

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『ペンション経営のすべて』
ペンション開業のためのノウハウを詳細に解説

 この本は、ペンション経営の解説書である。著者は、販促企画・市場調査・商品開発などを仕事としており、ペンションだけでなく、さまざまなサービス業の商店経営に通じているということだ。

 本書は、まずペンションとは何かから始まって、日本における歴史、民宿など他の宿泊施設との比較や立地別のタイプ比較、レジャーの変遷との関連などが解説されている。

 第3章以降は、ペンション開業ためのアドバイスとして、オーナーに求められる適性、用地、規模、労働力、集客対策、施設設備、運営方法、計数管理のあり方などが解説されている。

 全体を通読してみると、総花的で読み進めていくにはテンポが重いような気がしたが、開業を真剣に考えている人が読むならば、「総花的」という表現も、「丁寧で詳しい」解説書ということになると思う。例えば、準備する食器類にしても、その食器の種類から、用意する数量に至るまで解説されている。

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『ペンションおもしろ経営学』
ペンションのFC経営者・コンサルタントによるペンション経営の解説

 この本の前半では、ペンションを開業した著者の生い立ちから始まり、開業を思い立ってからの開業準備やオープン後の営業の状況などが紹介されている。また、オーナーの適性、立地や設備の留意点、資金繰りなども解説されていて、この部分が最も勉強になる。

 著者は、ペンション経営を単なる生業としているのではなく、ペンションのフランチャイズ(FC)経営に乗り出している。また、FC本部だけではなく、そのノウハウを活用してコンサルタント業務も行っている。本書の後半は、この著者のビジネスモデルに関する説明である。

 その内容は、ペンションをFC経営することを推奨しているのではなく、著者のFCに加盟するオーナーのメリットを説明することが主目的のようである。

 ペンション経営のノウハウやオーナーとしての実務経験を身につけたい開業希望者、開業資金はないがペンションに住んで働いてみたいと思っている支配人希望者にとっては、十分に参考となる内容になっているように思う。

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